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【お墓編】お墓に入らない その1~散骨

2022年6月08日2022年6月08日

【所沢市斎場】散骨に対する忌避感の薄れ

昨今、「死んでお墓に入るのが当然」だと思わない人たちが増えています。
2009年にある研究者がおこなった調査では、「お墓にはいらない」と回答した人が全体で20.5%、女性では26.6%に達したという結果が出ています。

一方、「自然に還りたい」「思い出の場所で眠りたい」と、海や山などに散骨を希望する人が増えています。
「墓地、埋葬等に関する法律」では、墓地以外に遺骨を埋めることを禁じていますが、撒くことは規制の対象ではありません。

そもそも、散骨が日本で広く知られるようになったのは1990年以降のことです。

1991年に、散骨を個人の権利であるとして推進する「葬送の自由をすすめる会」(現在はNPO法人)が散骨を実施しようとした際、
刑法の「遺骨遺棄」などの法律に違反するかが問題となりましたが、
当時の法務省は、「葬送を目的とした節度を持っておこなうかぎり、死体遺棄には当たらない」という、
非公式の見解を出したことが発端となっています。

1990年の政府の世論調査では、「散骨を葬法として認めるべきではないと思う」と回答した人が過半数を占めましたが、
前述の2009年の調査では、散骨を「葬法としては好ましくない」と考えている人は14.7%で、
「自分はしたくないが、他人がするのはかまわない」と回答した人が55.1%と過半数を占めています。

『マディソン郡の橋』や『世界の中心で、愛をさけぶ』などのヒット映画で、散骨がロマンティックに描かれたことも、その一因ではないかと考えられます。

【所沢市斎場】地域住民ともトラブルを防ぐために

しかし、日本には散骨に関する規制だけでなく、撒き方に関するルールさえもなく、撒く人のモラルに任されているのが現状です。
海外では、海岸から離れる距離、遺骨の大きさなどを細かく条例で定めている国が少なくありません。

2005年には、北海道の長沼町で、散骨を請け負う団体と近隣住民との間にトラブルが起き、墓地以外に人骨を撒くことを禁止した「さわやか環境づくり条例」が施工されました。
この条例では、ごみやイヌ・ネコの糞尿(ふんにょう)と並び、人骨を撒くことを禁じています。

私有地であったものの、それとわかるような形状で散骨をしたことも、住民たちの感情を逆なでしました。
遺族にとっては大切な遺骨でも、赤の他人からすれば、気持ち悪いという感情を抱いてしまうのも仕方ありません。

長沼町の条例制定を受け、七飯町(北海道)、諏訪市(長野県)、岩見沢市(北海道)、秩父市(埼玉県)、御殿場市(静岡県)でも散骨を規制する条例を制定しています。
一方、島根県隠岐(おき)に位置する海士町(あまちょう)には、散骨所となっている無人島があります。
散骨のために島に上陸できるのは、年に2回の決められたときだけで、撒く遺骨の大きさや撒き方、撒く場所も細かく定められています。

死者と生者が共生するには、地域住民の立場から散骨のあり方を考える視点も必要なのです。

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